2026年のクラウドファンディングの現在地──2025年にゲームがKickstarterで集めたのは2600万ドル、成立443件。ほぼ完成した作品と既存の客が前提に
GamesIndustry.bizが、2026年時点でKickstarterを使ってゲームの資金を集めることについて、専門家や実際にキャンペーンを回した開発者に取材しています。巨額の調達が話題をさらった時代は過ぎましたが、ゲームの一部を賄う手段としては依然として現実的な選択肢だという内容です。
Ico PartnersのThomas Bidaux氏の調査によれば、2025年にゲーム関連企業がKickstarterで集めた額は2600万ドルでした。これは2024年と同水準で、2015年の大きなブーム以降では成功した年のひとつにあたります。成立したゲーム企画は443件で前年から4%の微減、10万ドルを超えたものが55件、50万ドルを超えたものが11件ありました。Bidaux氏は「50万ドル超の企画がこれだけ出たのは2015年以来」「2026年も2025年並みのペースになる初期の兆候がある」と述べています。
一方で、参入のハードルは明確に上がっています。プラットフォーム初期には企画を提示するだけで資金が集まり、Frontierの『Elite: Dangerous』は2012年に粗い開発中の状態で150万ポンド以上を調達しました。現在はほぼ完成したゲームがなければ資金を得られません。Bidaux氏は「発売品質の映像が撮れる状態にゲームを持っていく必要があり、体験版を出せればなお良い。それに加えて、マーケティングもかなり進んでいなければならない。すでに関心を持ち、関与している客が必要です」と説明します。
この点が示すのは、資金繰りが急に苦しくなったときの逃げ道にはならないということです。Bidaux氏は「クラウドファンディングは根本的にマーケティングとコミュニティの活動です。資金調達が難しい業界で、Kickstarterが選択肢になる段階まで到達すること自体が簡単ではありません」と述べています。
運用上の落とし穴もあります。『Lawn Mowing Simulator 2』でキャンペーンを実施したSkyhook GamesのDavid Harper氏は、2度にわたり大口の支援が入ったものの、そのアカウントが後に削除されたと話します。2度目のケースでは、3週間以上「達成済み」だった状態から最後の24時間で目標を下回りました。Kickstarter側の延長措置と追加の支援者によって最終的に成立しましたが、Harper氏は「自分たちで結末を制御できている感覚を持つのが難しかった」と振り返っています。対策としては最上位リワードの金額を抑えることが挙げられますが、それは善意の大口支援者の機会も同時に削ることになります。
クラウドファンディング自体への批判もあります。Timeless ToucanのDaniel Milo氏は、成功にはほぼ完成した作品と既存の客層が必要であること、Steamで出す場合はキャンペーンでキーを配ると中核ファンのレビューがプラットフォーム上で反映されないこと、失敗したキャンペーンがパブリッシャー獲得の妨げになり得ることを挙げています。さらに「全か無か」の仕組みと「35秒で達成」という文化のせいで、実際に必要な額より大幅に低い目標を設定するよう促され、『達成したのに完成までたどり着けない』作品が生まれるリスクがあるとも指摘しています。代替案としては、パブリッシャー・エンジェル・VCといった従来の資金調達か、初期の報酬を抑えて将来の利益や株式で報いるレベニューシェア型を挙げています。
取材に応じたほぼ全員が共通して挙げた助言は、キャンペーン開始前にコミュニティを作り込むことでした。IronwardのHrvoje Horvatek氏は「フォロワーが最低500人に届くまでは開始しないこと。それが、マーケティングが想定どおりに働かなかった場合でもまともなスタートを切れる唯一の方法です」と述べます。Bidaux氏は「『Coming Soon』ページの公開とキャンペーン開始の前に、最低3か月のマーケティング期間を推奨します。6か月を勧める専門家もいます」としています。ただしHarper氏は、代理店に支払ってフォロワー数を増やすと偽アカウントを買ってしまうリスクがあり、実際に同時期の別キャンペーンではフォロワー数が多いのにほとんど支援に転換しなかった例があったと注意を促しています。
ページそのものの作り込みも軽視できません。2025年に『Crescent County』で目標の2倍以上となる約9万5000ポンドを集めたElectric SaintのAnna Hollinrake氏は「GIFです。ページをゲームプレイのGIFで埋め尽くしてください。アートを前面に出し、印象の強い画像を用意すること」と話します。制作過程を見せることも有効で、「作業中のスケッチや初期のアイデアを出すことを恐れないでください。とくにAIの時代には、人は思考の過程を見たがります。率直であることがKickstarterでは評価されます」としています。実務上の注意として、個別のリワードは公開後に画像を追加できず、誰かが選んだ時点で内容が固定される点も挙げられました。
まとめると、2026年のKickstarterは「資金を集める場」というより「すでに作った作品と、すでに集めた客を換金する場」に近づいています。募集開始の3か月から半年前から宣伝を始め、500人の見込み客を確保し、発売品質の映像と体験版を用意する。この条件を満たせる段階にいるかどうかが、そもそもの参加可否を分けます。逆に言えば、その条件を満たしているなら、443件・2600万ドルという市場はまだ機能しています。
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