11年ずっと早期アクセス、それでも売れ続ける──『BeamNG.drive』の累計1000万本と2億ドル
車をぶつけて壊す物理シミュレーター『BeamNG.drive』が、2015年5月の早期アクセス開始から11年たったいまも、Steamで伸び続けています。ゲーム発見の分析を手がけるGameDiscoverCoが、同作の数字と開発元への取材をまとめました。
まず規模です。同作のSteamでの同時接続は、日常的におよそ2万5000人にのぼります。しかも早期アクセスに入ってからの全期間を通じて、同時接続が少しずつ増え続けてきました。GameDiscoverCoの推計では、累計販売は1000万本を超え、Steamの総売上はおよそ2億ドル。直近12か月だけでも130万本が売れています。
注目すべきは価格の扱いです。同作は、これまで一度も20%を超える値引きをしていません。セールの深さで売上を作る一般的なやり方とは逆で、それでも売れ続けているという形です。Steamのユーザーレビューは97%が好評を保っています。
開発元はドイツのBeamNG GmbHで、従業員は85人。ゲーム本体に加えて、企業向けの『BeamNG.tech』も運営しています。こちらは自動運転のシミュレーターなどに使われるツール版です。ゲームとしての収益と、技術そのものを売る収益の二本立てになっています。
技術の中身は、ソフトボディ物理と呼ばれる仕組みです。車体が実際にひしゃげる挙動を計算するもので、開発元は「ソフトボディ物理は長く、地味な投資だ。いまの場所にたどり着くまで、多くの作業と粘りが必要だった」と説明しています。この分野の探求は20年以上さかのぼり、2005年に登場した前身の無償ソフトが同じ狙いを持っていました。
伸びの理由としてGameDiscoverCoが挙げるのは、複数のマルチプレイやユーザー制作コンテンツ、そしてYouTuberの流入です。加えて技術的な事情もあります。多数の車をソフトボディ物理で動かす計算はきわめて重く、PCの性能が上がったことでフレームレートの落ち込みが減ってきました。
もうひとつ特徴的なのは、対象とする客層が一つではないことです。車を壊して形の変化を楽しむ人、ラリーやシムレーシングを楽しむ人、トラックシムやサンドボックス系の破壊ゲーム、サバイバル運転シムの層まで、プレイヤーの重なりが広く分布しています。同作は公式には実車のIPを使っていませんが、有志が作ったBMWやメルセデスのモデルが多数出回っており、ユーザー制作コンテンツが対象市場そのものを広げている構図です。
開発元の言葉が、この持続の理由をよく表しています。「根底にあるのは、題材が古びないということだ。物理も車も流行り廃りがない。我々の成長は、ひとつの瞬間に引っ張られたものではなく、ゆるやかなものだった。だからこそ続いてきたのだと考えている」。個人開発者にとっては、発売時の山を作ることだけが道ではないという実例です。値引きを深くせず、長く手を入れ、遊び方の幅をユーザーに委ねる。その積み重ねが11年で1000万本になった、という読み方ができます。
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