サンリオ・東映・パルコが語るゲーム参入の狙い──サンリオは3年で10タイトル・30人体制、東映は既存IPに頼らずオリジナルから
東京ゲームショウ2026の会期中、9月17日に「異業種からの挑戦~サンリオ、PARCO、東映が語るゲームパブリッシング事業の狙い」というフォーラムが開催されました。登壇したのは、サンリオ デジタル事業本部 本部長の濵﨑皓介氏、東映 上席執行役員 事業推進本部長 新規事業開発部長の吉元央氏、パルコ ゲーム事業開発部 部長の西澤優一氏の3名。モデレーターは日経Gaming編集長の平野亜矢氏が務めました。
3社の動きはほぼ同時期です。パルコは2025年8月19日にPARCO GAMESの立ち上げを発表し、サンリオはSanrio Gamesを、東映は東映ゲームズを、いずれも2026年4月21日に発表しました。異なる強みを持つ3社が相次いでゲーム事業への参入を表明した理由が、パネルディスカッション形式で語られています。
サンリオは、ライセンス事業・グッズ展開・ロケーションベースエンターテインメントを土台に、デジタルゲーム、映像、スポーツを積み上げてファンダムを広げる「サンリオ灯台構想」を掲げています。同社が重視するのは「サンリオキャラクターへの原体験」で、幼少期にどのキャラクターとどう触れ合ったかが大人になっても影響を持つという考えから、デジタルデバイスとゲームの重要性を強く意識してきたといいます。自社パブリッシングに踏み込んだ理由について濵﨑氏は、「今のゲーム市場は、サンリオが直接動くことで獲得できる分野がある」と説明。Apple Arcadeを起点にコンソールへも展開した『Hello Kitty Island Adventure』の好評も後押しになったそうです。
サンリオが狙う場所も明言されました。AAAとインディーの中間にあたる、いわゆるミドルタイトルです。AAAほど極まった体験を届けるわけでもなく、インディーほど作家性を出すわけでもないミドル規模は近年ペイしにくくなっていますが、そこにサンリオIPという付加価値を乗せれば勝機があるとにらんでいます。体制づくりについても具体的な数字が出ました。事業開始前のヒアリングで「ゲームは1本だけ作って当たる事業ではない。利益を出すには6本程度の制作・リリースを見込むべき」という知見を得たことから、向こう3年で10タイトル程度をリリースする計画を策定。現在は中途採用を含め30名ほどの規模になっているとのことです。
東映は、IPをゼロから創出できるだけでなく、放送・配信、マーチャンダイジング、イベント、海外展開までをグループ内で展開できる点が強みです。ゲーム参入の理由として「映像以外のチャンネルからIPを創出してもよい時期にさしかかっている」「プラットフォームを通じて世界中にIPを届けられるゲームは、グローバル展開にも適う」という2点が挙げられました。東映ゲームズは『HINO』『DEBUG NEPHEMEE』『KILLA』といったオリジナルタイトルのパブリッシングからスタートします。「仮面ライダー」「プリキュア」といった強力なIPを持ちながら既存IPに頼らない判断をしたのは、既存ファンダムにゲームを届けるのではなく、東映というブランドをより幅広いユーザーに知ってもらうところから始めるためだと吉元氏は語りました。目標は、映像作品起点でゲーム化するのではなく、ゲーム起点で映像作品へ広げられるIPの創出です。
パルコは、商業施設を軸に演劇、音楽、ギャラリー、コラボカフェなどカルチャーに寄り添う事業を展開してきました。中期経営計画にIPとグローバル戦略を掲げており、「近年勢いを増し続けているゲームカルチャーに対してもっとできることがあるのではないか」との思いから参入を決断。2019年に渋谷パルコ6階でグランドオープンした任天堂の直営店「Nintendo TOKYO」の盛況ぶりに、ゲームが持つ力を教えられたことも一因だといいます。ターゲット設定では「Not Play Only」を重視し、プレイするだけでなくアパレルやアートワークとしてゲームを楽しむ層、配信者を介してゲームに親しむ層へもアプローチする構えです。
体制づくりの話には、開発者にとって実務的な示唆が含まれていました。パルコは「キャリア採用」と「社内のゲーム好きな社員を募る」の二段構えで進めていますが、ゲームのパブリッシングは商業施設のリーシング(テナント誘致)と似た面があるという視座が示されました。リーシングで重要なのは、入ってほしいブランドが何を好み何を望んでいるかを見極めて交渉することで、その審美眼が開発者や開発チームへパブリッシングを持ちかける際にも生きているそうです。東映は、ゲーム事業を始めたことを知ってもらうため国内外のゲーム関連イベントに足を運ぶことからスタートし、当初は「あの東映がゲームを?」という反応も多かったものの、最近は認知が広がってきたとしています。
セッションの最後、モデレーターの平野氏は「ゲーム事業への参入の経緯や目標は各社それぞれだが、ゲーム事業と自社の強みの共通点を見つけて橋頭堡にしているところは3社の共通点」とまとめました。
個人開発者にとって注目すべきは、パブリッシャー候補が3つ増えたという以上に、その3社が何を探しているかが明示されたことです。サンリオはIPの付加価値でミドル規模を成立させる相手を、東映は映像化の原作になりうるオリジナル作品を、パルコはゲーム以外のカルチャー展開まで一緒に組める作品を求めています。ここには、いずれも自社の既存IPを使ってほしいという話ではない、という共通点があります。売り込む側から見れば、相手のIPに寄せるより、自分の作品が相手の強みのどこに接続できるかを説明できるほうが通りやすいということです。東映が「イベントに足を運ぶことから始めた」と語っているのも見逃せません。接点は、まだ展示会の現場にあります。
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