miHoYo、AI音声サービスに勝訴──上海の裁判所が75万元の賠償命令、『原神』63キャラの声を無断で複製し販売
『原神』を手がけるmiHoYoが、中国で法的な勝訴を収めました。上海の裁判所が、社名を明らかにされていない生成AI開発企業に対し、75万元(約11万2000ドル)の支払いを命じたものです。同社が『原神』のキャラクターボイスを不適切に複製し、販売していたと認定されました。
この件を報じたのは中国メディアのThe Paper(澎湃新聞)で、Automaton Mediaを経由してGame Developerが伝えています。The Paperの記事によると、本件は生成AIで他社が制作したボイス作品を再現する行為について、上海で初めて「不正競争」として争われた事例とされます。
miHoYoの主張は2点にわたりました。ひとつは、被告が生成AIを用いて『原神』63キャラクターの声を複製したこと。もうひとつは、ゲーム内の「画像とストーリーアニメーション」を宣伝に流用し、その音声パックを顧客に販売していたことです。裁判所はこれを、作品の人気に便乗する意図を示すものと判断しました。
命令が出たのは6月30日で、被告には該当アセットの配布停止とmiHoYoへの損害賠償が課されています。被告はいったん控訴しましたが、その後の数か月のあいだに控訴を取り下げたと報じられています。
この判断が持つ意味は、中国の裁判所が、ゲームキャラクターの見た目や声といった著作物を生成AIで再現する行為をどう評価するのかについて、一定の指針を示した点にあります。中国市場で事業を展開する開発者にとっては直接関係する情報です。
同時に、生成AIの普及があまり語られない形のリスクを生んでいることも浮かび上がります。第三者の企業が、許諾も対価もなく著作物を再現できるツールを作り、それを販売できてしまうという構図です。2023年には声優のVictoria Atkin氏とTim Friedlander氏が、自分たちの仕事がサードパーティのAI音声ツールでプレイヤーによって再現され、他のゲームに差し込むMODとして使われている実例をGame Developerに語っていました。そうしたAIツールの提供元の一部、たとえばElevenLabsは、ゲーム開発者向けにもサービスを売り込んでいます。
なお、今回の判断はあくまで「生成AIで著作物を複製し販売する行為」を対象としたものであり、著作物をAIの学習データとして利用することの是非という、なお決着していない論点までは扱っていません。
個人開発者の視点では、この件は両側から読めます。自分の作品のキャラクターボイスが無断で商品化された場合に、少なくとも中国では不正競争として争える前例ができたこと。そして裏返しに、AIボイスツールを自作に使う際、そのツールが何を学習し何を再現しているのかを把握しないまま採用すると、利用者側が矢面に立ちうることです。特に「特定の作品のキャラクターに似た声」を売りにするツールは、出力物が自作に入った時点で自分の問題になります。
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