EUが「KIDS Act」草案を公表、オンラインゲームも規制対象に──ログインボーナスや連続プレイ特典が「過度な利用の誘導」として制限対象へ
欧州委員会が、子どもの保護を目的とした新法「EU KIDS Act」の草案を公表しました。もっとも注目を集めている条項──13歳未満のアクセス禁止と、13歳から15歳への制限──が適用されるのはSNSと動画共有プラットフォームに限られますが、それ以外の義務はオンラインゲームにも及びます。承認された場合、EU域内で販売されるすべてのオンラインゲームが対象となり、その定義は非常に広く、Robloxのようなプラットフォームからパッケージ版タイトルのマルチプレイヤーモードまでを含みうるとされています。
ゲームに対する中心的な義務は、未成年による過度な利用を助長しないことです。ドイツの法律事務所ADVANT Beitenのアンドレアス・ローバー弁護士の分析によれば、これは例えばログインボーナスや、一定期間プレイしないと特典を失う設計が、多くの場合禁止されうることを意味します。準拠する形で実装する余地は残るかもしれないものの、こうした機能が好意的に見られていないことは明確だといいます。同種の基準はPEGIやUSKの年齢レーティングでも近年重視されてきましたが、KIDS Actの提案はより粗く、たとえば持続型のオンライン世界にとっては難しい問いを突きつけるとしています。
草案はさらに、未成年と他の利用者との接触を制限することも求めています。この義務を満たすため、オンラインゲームの提供者は原則として保護者による管理機能と年齢確認の仕組みを実装する必要があります。ただしSNSに課される要件よりは緩やかで、子どもにとって問題となる機能を含まないタイトルでは不要となる可能性も残されています。加えて、年齢レーティングとオンラインゲームに関する行動規範の規定も置かれ、前文はPEGIに言及しつつ、既存の枠組みを超えたより拘束力のある内容になっています。
業界にとっておなじみの論点も再登場しました。「オンラインゲームをプレイする未成年は、仮想通貨や変動報酬システムを通じて行われる取引の実際の金銭的価値について、透明性の恩恵を受けるべきである」という一文です。後者はいわゆるルートボックス、前者は決済の透明性をめぐる議論を指しています。ただし草案はこの点で矛盾をはらんでいます。ゲームについてはこの記述が前文(立法趣旨)にのみ現れ、実際の条文では経済取引に関する規定がSNSと動画共有サービスに明示的に限定されているためです。これが起草上の見落としなのか、ゲームの収益化透明性を行動規範の仕組みだけで扱うという意図的な選択なのかは、現時点では判断がつきません。
この草案に対し、業界団体Video Games Europe(VGE)はただちに声明を出しました。VGEはPEGIとUSKをヨーロッパで販売されるゲームの事実上の標準とするよう求めたうえで、「子どもの保護される権利は尊重されなければならないが、同時に、遊ぶ権利、文化や余暇へのアクセスの権利も尊重されなければならない」と述べています。続けて「ヨーロッパのすべてのゲームとすべてのプレイヤーに適用される一律の年齢確認措置には警鐘を鳴らす」とし、子どものゲームへのアクセス管理は保護者の責任であるべきだと主張しました。VGEはパブリックコンサルテーションの実施を求め、立法過程で建設的に関与していく姿勢を示しています。
個人開発者にとっての含意は、対象が大手の基本無料タイトルに限られない点にあります。EU域内で販売するオンライン要素のあるゲームであれば、規模を問わず義務がかかりうる設計です。リテンション施策として当たり前に使われてきたデイリーログイン報酬や連続プレイのストリーク、フレンド機能やボイスチャットといった要素は、いずれも設計段階から見直しの対象になります。欧州委員会の提案はEU加盟国で直接適用される規則(Regulation)として設計されていますが、テキストはまだ最終版ではなく、欧州議会と加盟国の承認を経る必要があります。審議の過程で条文がどこまで具体化されるか、とくに前文と条文のあいだに残ったゲーム収益化の扱いをめぐる食い違いがどう解消されるかが、次の焦点になります。
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