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海外2026-09-24

EUが「KIDS法」草案を公開──未成年へのログインボーナスや連続記録は原則不可、制裁金は世界売上の最大6%

欧州委員会は9月17日、子どものオンライン環境を規制する新しい法案「EU KIDS法」の草案を公開しました。KIDSは「Keeping Internet Digital Spaces Accountable and Trustworthy」の頭文字です。13歳未満の利用禁止や15歳未満への制限といった、最も議論を呼んでいる規定はSNSと動画共有プラットフォーム向けのものですが、草案はオンラインゲーム、AIコンパニオン、チャットボット、アプリストア、OSにも義務を課しています。GamesIndustry.bizに寄稿した法律事務所ADVANT BeitenのAndreas Lober氏が、ゲームに関わる部分を整理しています。

成立した場合、規則はEU域内で販売されるすべてのオンラインゲームに適用されます。「オンライン」の定義はきわめて広く、Robloxのようなサービスから、ディスク販売のゲームのマルチプレイモードまで含みうるとされています。明確に対象外といえるのは、関連するオンラインモードを持たないディスク販売のゲームだけです。EU域内で積極的に販売していなくても欧州のプレイヤーが一定数いる場合、たとえば米国ストアフロントで売られているゲームの扱いは、境界線上のケースになります。一方、主に教育目的で設計され教育機関が運営するサービスや、一部の非営利サービスは適用除外です。

ゲーム側の中心的な義務は「未成年の過度な利用を促さないこと」です。ここでの未成年は18歳未満を指します。Lober氏は、ログインボーナスや、一定期間遊ばないと特典を失う仕組みは、未成年に対してはしばしば禁止されることになると指摘しています。準拠できる実装の余地は残るかもしれないものの、こうした機能が好ましくないものと見なされている点は明確だとしています。

難しいのは、このルールが分かりやすいロイヤルティ機構の先まで届くことです。規定が狙っているのは、決まった間隔で戻ってこないプレイヤーに不利益を与える設計全般です。永続する世界を持つゲームでは、ボーナス制度がなくても「世界が進み続ける」という事実そのものが、その種の不利益として働きます。設計者にとって問いは「毎日のプレイに報酬を出しているか」から「ゲーム全体として、未成年を決まった周期で引き戻していないか」へ移ります。線引きははるかに難しくなります。

オンライン上の保護についても規定があります。未成年と他の利用者の接触は制限されなければならず、事業者は保護者による管理機能と年齢保証の仕組みを実装する必要があります。ただし要件はSNSより軽く、SNSと動画共有プラットフォームがEU専用の年齢確認ソリューションを使わなければならないのに対し、ゲームは年齢推定その他の均衡のとれた方法を使えます。正確でプライバシーを守り差別的でないことが条件です。自己申告だけでは足りません。アプリストア経由で配信されている場合は、ストア側がすでに年齢を判定しており、同意のうえでその情報をゲームに引き渡せるため、作業の一部は上流で済みます。

年齢レーティングと行動規範についての規定もあります。多くの国で任意であるPEGIの枠組みを土台に、法的拘束力のあるものへ変えていく狙いに見えると、Lober氏は読んでいます。ここで問題になるのが、国内法で独自の青少年保護規則を持つ加盟国の扱いです。ドイツには州と連邦の両方に規則があり、公的な規制当局に加え、国内法に裏打ちされた業界の自主規制機関USKがあります。草案は、過度な利用やオープンな通信といった交流面のリスクについてUSKが規制する余地をあまり残していないように見え、EUと加盟国のどちらに権限があるのかという議論につながりうる論点です。

仮想通貨とルートボックスの扱いは、草案の中でねじれています。前文の第40項には「オンラインゲームで遊ぶ未成年は、仮想通貨を通じた取引の実際の金銭的価値についての透明性と、変動報酬システムへの露出からの保護を受けるべきである」と書かれています。しかしゲームについては、この内容が前文にしか現れず、実際に効力を持つ本文には入っていません。本文の経済的取引に関する規則が適用されるのはSNS、動画共有プラットフォーム、AIコンパニオン、汎用の会話型チャットボットで、オンラインゲームは含まれていないのです。単なる起草上の漏れなのか、ゲームの収益化の透明性は行動規範の仕組みだけで扱うという意図的な選択なのかは判然としません。この論点は今年末までに初稿が出るとされる「EUデジタル公正法」でも扱われる見込みで、立法過程で議論が続く見通しです。

AIについては、「汎用の会話型チャットボット」と、ゲーム業界にとって重要な「AIコンパニオン」が新たに規制対象になりました。こうしたAIは、感情的な依存を生みやすい対人関係を模した設計や振る舞いを避けなければならず、安全上の理由を除いて、未成年との過去のやり取りから得た情報や分析を既定で使うことも禁じられます。ただし、ゲームで使われるAIのすべてがAIコンパニオンに当たるわけではありません。判定の鍵は、そのシステムが利用者との社会的・感情的・対人的な関係を模したり促したりするかどうかです。LLMで動くNPCが、現実の利用者ではなく作中のプレイヤーキャラクターに向けて応答する場合は該当しないという議論が成り立ちます。一方で定義は関係を「促す」システムも含むため、見た目より広く網がかかる可能性は残ります。

このほか、事業者は未成年が自分の接する内容を管理しフィードバックできるコンテンツ制御ツールを提供し、その効果を即座かつ継続的に反映させる必要があります。サービス内での交流、コミュニケーション、創作の方法を未成年が自分で調整できる交流制御も求められます。これらの機能と情報は、未成年がすぐ理解できる形で、容易にアクセスできる場所に置かれなければなりません。執行は既存のデジタルサービス法の体制が担い、AIコンパニオンとチャットボットについてはAI法の体制が適用されます。違反した事業者には全世界の年間売上高の最大6%の制裁金が科されうるほか、オンラインゲームについては加盟国ごとに監督当局を指定することになります。

業界団体Video Games Europeは、発表と同じ日に声明を出しました。子どもの保護される権利は尊重されるべきであり、同時に遊ぶ権利、文化や余暇に触れる権利も尊重されるべきだとしたうえで、「欧州のすべてのゲームとすべてのプレイヤーに一律に適用される広範な年齢保証措置には慎重であるべきだ」と述べています。欧州で販売されるゲームについてはPEGIとUSKを事実上の標準とすることを求め、子どものアクセス管理は保護者の責任とすべきだという立場も示しました。パブリックコンサルテーションの実施を求め、立法過程で建設的に関わるとしています。

草案はまだ最終版ではなく、欧州議会と加盟国の承認が必要です。EUで初稿から最終的な法令の採択まではふつう1〜2年かかりますが、今回は欧州委員会が最初から高レベルの素案ではなく完成度の高い条文を提示しており、早期の採択を狙っているとLober氏は見ています。個人開発者にとっての論点は、オンライン要素を持つ限り規模に関係なく対象になりうること、そして影響がプラットフォーム対応ではなくゲーム設計そのものに及ぶことです。デイリーログインや連続記録を前提にしたリテンション設計を、未成年に対してどう扱うか。年齢保証を入れて一部機能を制限するのか、全員が全機能を使える形に設計し直すのか。Lober氏はこの二択を、いま評価すべき問いとして挙げています。

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